国内でのワクチン接種も進んでいる状況ですね。

今回の冒頭のお話として、前回の内容に少し補足説明をくわえましょう。

「感染」とは、体内に病原体が侵入し、定着して増えていくことを指します。
「感染症」とは、その病原体により引き起こされる疾患・疾病を指し、病原体によって発症した状態ですね。

「感染」しただけで発症しない方もおり(不顕性感染)、これがいわゆる保菌者(キャリア)と呼ばれる状態です。自分には症状が出ていませんが、他人に感染させる可能性はあります。

「ワクチン」とは、体内に病原体が侵入してきても、定着して増えていくことを食い止めるためのものですから、ワクチン接種を行なえば感染しない、ということではありません。
感染しても体内で増えることを阻害できるので発症させない、重症化させないためのもの、と言えます。
厚生労働省の新型コロナワクチンのサイトでも「ワクチンは『発症予防』『重症化予防』のためのものであり『感染予防』の効果はまだ検証中」と記載されていますので、この点は間違えないほうが良いでしょう。

マスメディアの記事などでも「感染拡大」という文字が目につきますが、「感染」と「発症、重症化」は別のものということを踏まえて、正しく把握、理解することが大切です。

https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0011.html

 

さて、今回は「ストレス」のお話です。

「ストレス」という言葉は良く見聞きしますが、何か?と問われるとなかなか説明しづらいですね。
定義としては、

「外部からの刺激によって引き起こされる緊張状態」

とされています。
「緊張状態」とは多分にネガティブ(否定的)な意味合いがありますので、つまり「何らかの要因によって心がゆがめられ苦しく感じる」ことであり、自覚の大小にかかわらず、この状態は身体にも影響を及ぼします。

この状態として起きる「ストレス反応」には大きく分けて、心理面、身体面、行動面の3つがあると言われています。

【心理面】
気力の減少、不安感の増加、イライラ、抑うつ など

【身体面】
目の疲れ、頭痛、肩こり、身体の痛み、胃痛、不眠 など

【行動面】
飲酒や喫煙量の増加、注意力散漫によるミスや事故の増加 など

このうち、【心理面】と【行動面】は皆さんにもご理解いただけると思いますが、では【身体面】での不調がなぜストレスから引き起こされるのか? というのが今回のポイントですね。

ここには「自律神経」というものが関わっているとされます。

「自律神経」は字の通り「自分で律している神経」のことで、私たちが意識的に調整しているのではなく、自身で常に身体の状態を調整しています。勝手に私たちの身体に都合の良いように働いてくれている神経たちとでもいえばよいでしょう。

「自律神経」は「交感神経(こうかんしんけい)」と「副交感神経(ふくこうかんしんけい)」に分かれています。

「交感神経」は、緊張や興奮といった方向に働きます。
例えば、眼の瞳孔(どうこう=ひとみ)は大きくなり、光が多く入って物が良く見えるようになります。また心臓の動きも活発になって身体に血液を多く供給します。抹消の血管が細くなって血圧も上がります。何か予期せぬことが起きても、対応を即座に判断して身体もすぐ反応できるようにするために働きます。

反対に「副交感神経」は、弛緩や冷静といった方向に働きます。
心臓の動きもゆっくりとなり、血管は広がって血圧は下がります。呼吸は深く、また消化器系の働きが増して食べたものを消化し、エネルギーとして蓄積していくなど、身体を休め次の動きに備えるための働きをします。

ですが、ここに「ストレス」がかかっているとどうなるでしょう?

身体は常に緊張を強いられます。いつ何が起こるかわからないような状態に備えるように、自律神経が働きますが、先ほど言ったように自律神経は私たちがコントロールすることはできません。どんなに静まれ、静まれ、と命じても静まるものではありません。

常に緊張、興奮して休まることがないのですから、当然身体は疲れます。
内分泌系からはアドレナリン、ノルアドレナリンといった交感神経系に作用するホルモンが放出されます。興奮状態が持続するので、夜も眠れなくなります。

心臓もドキドキと動きっぱなしで負担がかかります。消化器系の働きは低下しますので(消化液の分泌減少)、食べ物の消化不良を起こしたり、筋肉の緊張から肩こり目の疲れなどが起こります。

 

このようにして「ストレス」が私たちの身体に及ぼす影響は、単に心理的なものだけではなく明確に身体の機能を阻害することが、研究者からも報告されています。